OB山行 和賀山塊 堀内沢マンダノ沢

2009年度 OB山行 和賀山塊・堀内沢マンダノ沢(9/20〜22)
作成者:塚越
OB2安達 OB1木村、白濱、L塚越 4秋山

自分が執行の時に夏合宿の核心部として意気込んだ堀内沢マンダノ沢。結局雨に阻まれ当時は敗退。
昨年も企画するも、またもや天気に恵まれず中止に。
今年はOB山行として、現役の時には企画できなかった、羽後朝日岳を打つ定番ルートで計画。


9/19(土)晴れ
安達さんは新幹線、残り4名は北海道東日本パスを使ってのらりくらりと11時間アプローチ。新幹線だと3時間。普通列車よりも新幹線の方が本数の多い田沢湖線に文句を垂れつつ、懐かしの神代駅にたどり着く。タクシーで夏瀬温泉へ。水も使える公衆トイレの横で寝る。

9/20(日)晴れ
(◎夏瀬温泉)4:50—5:30(取水堰堤)5:40—(釣り20分)—(釣りたるみ20分)—7:45(朝日沢出合)—8:30(シャチアシ沢出合)8:45—9:45(マンダノ沢出合)10:05—10:40(2条15m下)—(たるみ15分)—(たるみ15分)—13:00(蛇体淵)

薄暗い中、吊り橋を渡り取水堰堤へと向かう。林道が2年前よりも刈り払われて歩きやすくなった印象。
取水堰堤の先からは右岸の明瞭な踏み跡に従い、適当なところで入渓する。

開けた渓の両岸には木々が茂る。ところどころ木の実が落ちている。これがサワグルミか?
行動開始20分後に魚影を確認し、たるみを高らかに宣言した。前夜、行動中は竿を出さないと言っていた白濱に皆の熱い視線が注がれる。

釣果は小さな底生の魚。個人的な感想としては唐揚げにするのがとても旨そう、というものだったのだが慈愛に満ちた隊の雰囲気はどうやらリリースに傾いている。
リリース。そもそも油を持ってきていない。
焚き火を囲いながらサワガニの揚げ物を肴に夜更かし、というのもやってみたいのだが。
釣果?

渡渉、中洲歩き、河原歩きを繰り返し、各々自由にぷらぷらと行く。途中、2年前に敗退した岩で記念撮影。
枝先が色づいた木も見られる。空は晴れ、天が高い。

倒木を渡る

三角錐岩

朝日沢出合の左岸に良い天場。
オイノ沢出合の右岸にも良いのがある。こちらはキャンプファイアーやっているのでは、というくらいに立派なかまどの跡があった。10人くらいは寝られるか。ブルーシートがデポされている。

マンダノ沢出合に着く。
八瀧沢の左岸を少し偵察したが、マタギ小屋は見つからず。一度お目にかかりたかったので残念。
夏合宿でERとして取り、今回もERに考えていた治作峠への尾根の取り付きは、実は結構シビアであった。木はあるがかなりの斜度で、いい場所を探さずにそのまま取り付くのであればリードも考えたほうが良かろう。上部だけの偵察ではまずかった、といまさら反省。

当初の計画ではここで一泊する予定であったが、前線が近づいていることと、マンダノ沢出合の雰囲気に思ったほどの感慨が湧かなかったことから、蛇体淵までサイトを延ばすこととする。

マンダノ沢に入ってからは、いままでのような河原歩きから、巨岩の間を縫うようにして高度を上げていく傾斜のある沢へと渓相が変化する。


滝の横に大岩がでーんと居座る2条15mは、踏み跡に従って大岩ごと左から巻く。残置スリングや青テープあり。沢床へと戻る下りが結構怖く、懸垂をしても良かった。
こういう、あの時懸垂しても良かった、手がかりがあると良かった、が度重なるといつか大事を起こすのだろうか、とか思いつつも今回の山行はほとんどそういった類のものは出さなかった。現役の時の、ただただ愚直にロープを出していたときの反動だろうか。
初心者がいない分、ロープを出すメリットとデメリットをより的確に見極めねばならない、とかやけに考えてしまったのは8月に行った中津川朱滝の巻きで滑落したからかも。

巨岩帯が続き、どんどん高度を稼いでいる感覚である。2条15m以後の滝は特に問題ない。

と、川幅が広がり沢が突然穏やかになる。
期待に胸が膨らむ。自然と足を速めると、夢にまで見た蛇体淵が現れた。
いくつも見た写真の通りである。ただ淵の滝は写真よりも大きく見えた。しかも天場は想像以上によかった。ともすれば3年間、頭の中で美化しすぎてはいないかと不安であったが、それは杞憂であった。

晴れ。淵に太陽が注ぐ。浅瀬を水がひたひたと静かに流れる。
15時まで自由行動とする。

白濱は釣竿を片手に姿を消した。
安達さんと秋山は焚き火をおこしてくれる。
木村塚越は裸になり淵を泳ぐ。楽園には裸が似合う。さすがにパンツは脱がないが。水は冷たいが太陽に当たっていると寒くない。木村は最新の防水カメラを水にどっぷり浸して水中撮影。ゴーグルまで準備する周到さである。自分がシュノーケルを持ってこなかったことを悔やんだ。


夜は焚き火を囲み、食事と皆の差し入れを楽しむ。白濱は釣果こそなかったがミズを採ってきてくれた。味噌汁にして飲む。
星空の下、焚き火を囲うのは久しぶりである。こういう時に飲む酒は格別に旨い。


9/21(月)晴れ後曇り
(蛇体淵)6:30—7:00(無名沢出合)—7:15(上天狗沢出合)—(たるみ15分)—8:00(下天狗沢出合)—(たるみ10分)—10:35(1200m付近水涸れ、たるみ)10:50—11:05(朝日岳山頂)11:55—12:20(下降点)—12:35(1100m湧水)—13:25(900m付近たるみ)13:35—14:15(600m付近たるみ)14:30—15:30(林道終点)

蛇体淵を左から巻く。右にも踏み跡らしきものが見えた。
巻きの途中に沢を覗いたら、なるほど滝の上は蛇のように曲がりくねった細長い淵となっていた。いままで滝と、その下の静かな釜を蛇体淵と呼ぶのかと思って変な名前だと勘違いしていたが、あれは蛇体淵の入口ということだったのか。

ERに取っていた無名沢や、上天狗沢を過ぎるところまで来ると、ブナやミズナラの原始林の間から木漏れ日が差し込むようになる。楓のは色づき始めている。美しい。それ以上の語彙を持たない。

下天狗沢に入ってすぐに3mトイ状の滝が現れる。これは水流左を楽に登れるのだが、その先の7m滝がやっかいである。直登はできない。塚越と秋山は右の草付きを試したが敗退。白濱は滝のすぐ右にあるルンゼから草付きを経て上のブッシュまでたどり着いたが、相当怖かったようだ。3mトイ状のすぐ上から右岸に取り付くルートを木村が見つけてくれたので、白濱以外はこちらを行く。7m滝の上の2つの滝も越えるのが難しそうだったので、まとめて巻いてしまう。踏み跡のようなものはあったかもしれないが特に当てにはならない。上手く沢床に下りられた。下りるときに秋山がスリング手がかりを出す。白濱も同じような位置でフリーで下降できていた。

その先は日本の渓谷'96にあるように、へつったり倒木を利用したりと楽しい。雲も出てきてさすがに泳ぎはしなかったが。同記録で一ヶ所だけザイルを出したとある5m滝は、Lが左の草付きルンゼをフリーで登り、トラバースして落ち口に出たがなかなか怖かった。落ち口の灌木に支点をとり、スリング手がかりを出した。残りはこれを使って右なり左なりから行く。

山頂が近づくにつれて再び空は晴れる。1200m付近で水が涸れる。高度を上げるにつれて視界も広がっていく。
「塚越さんの企画とは思えない」などと秋山が口にするほど気持ちよく晴れている。自分は夏合宿以降すっかり雨男の評判が定着してしまった。

やがて沢状地形が不明瞭になり、適当に草付きのスラブ状を登っていく。少し適当に登りすぎたかもしれない。もう少し左寄りに登り、早めに朝日岳南尾根に登っても良かったろう。直上すると灌木が待ち構えている。
スラブ状といっても危険は感じない。白濱曰く白毛門の詰めのようなもの。
そして灌木も実は大した苦労ではない。素直な灌木で、漕ぎやすい。

山頂。
風が心地よい。
あれが2年前の偵察で、風雨の中ツェルトを張った治作峠。その奥には山塊の盟主、和賀岳がどっしりと構える。堂々とした山容である。稜線の灌木は色とりどりの紅葉に染まっている。
はるか南には鳥海山。
眼を北に転じれば秋田駒ケ岳、その右奥に岩手山。TWVの先人たちが幾度と通った藪稜線がその手前に連なる。
生保内川の源流部も美しく燃え、志度内畚に至る稜線の岩壁が良く映えている。
満ち足りた。

山頂からの踏み跡は部名垂沢の下降点まで明瞭。稜線ではなく西側斜面をトラバースする形で続いている。下降点には赤布がベタ打ちされているので見逃すことはない。
下降点からは始めは灌木のトンネルをくぐるように踏み跡を辿り、やがて沢状地形に入る。随所に赤布。
1100m付近において突然水が湧き出ている。後はひたすら下るだけ。巻きも思いのほかハードである。両岸の藪を上手く使わねばならない。
ペースは上がらず、空は完全に曇り、そして沢は部名垂れている。
(このように形容詞のような使い方をしてもいいのではないか。それにしてもこの沢の名の由来は何なのだろう。)

550mを過ぎ、河原が広くなる。赤布に従っていると時々沢から離れ踏み跡を辿ることになるが、赤布を探す手間を考えた時、沢中を歩くのとどちらが早いかは疑問。いくつかの堰堤を全て左岸から下ると、左岸に林道の跡が現れる。しかし草木がぼうぼう。どうしたことかと思いしばらく歩くと、林道が右岸に渡るはずのところで橋がなくなっている。右岸に渡るとしっかりとした林道があり、ここが林道終点だと分かる。

予定通り林道終点でサイトとする。濃密な一日であった。
サイトでは再び白濱のミズが登場する。今度はシンプルな醤油漬け。粘り気があり、これまた絶妙な旨さ。日本酒が良く似合う。

9/22(火)雨
(林道終点)8:20—9:30(夏瀬温泉)
朝7:00くらいに目が覚めると白濱がまたミズを処理してくれていた。
やがて雨が降り出し、ツェルトの中でサイトする。

ラーメンにはミズや、白濱が持ってきてくれたラーメンの具が入っており美味。
そぼ降る雨の中、ツェルトをたたんで林道を歩き、夏瀬温泉に向かう。


後日談
夏瀬温泉の無料休憩所は変わらぬ姿で迎えてくれた。相変わらずトイレの扉を開けると自動的に便座が開く。
入浴料500円ではこちらが申し訳なくなってくる。

神代駅では白濱の家族が待っていて、ここで別れる。代わりに差し入れを頂いた。

入山前に連絡していた湯口さんからの返信が来ていた。
仙台で落ち合い、牛タンを食べ、そして湯口さん宅で飲み明かす。翌日早朝からバイトだと言うのに快く泊めて下さった。
変わらぬお姿に僕は嬉しくなった。
同期なのに安達さんと湯口さんが照れくさそうに話していて、むしろ僕ら後輩たちの方が気楽に話していて面白かった。

翌日帰途に着く。
良い山行であった。


まとめとか
一番良い時期に行けたと思っている。虫が減り、紅葉が始まり、でも寒すぎず、そして晴れた。
堀内沢マンダノ沢は思ったよりも変化に富んでいた。(自分の好きな)地味な河原歩きが主体かと思ったら、意外にも滝登りや高巻き、穏やかな流れや巨岩帯など色々な要素が織り込まれていて楽しい。

下天狗沢は資料が少ないということでワンゲル山行で企画するのは諦めていた。遡行図を見る限り、簡単な小滝をちょちょいと登って詰めの草原、と想像していたが、実際に行ってみると高巻きがあったり草付きの登攀があったりと、どこを調べても分からなかった対応に迫られた。まあそんな大げさなものでもないが、ちょちょいと、とはいかなかった。審議ではdisapproveされていたであろう下調べ不足が、しかし部という枠から離れた今では山行のスパイスである。

あくまで自分に対する反省だが、現役の頃の制約が無くなったことで、ややもすると自由になりすぎているかもしれない。手がかりやロープなど、もう少しこまめに出す習慣があっても良い。
部では多くの物を歩荷し、様々な場面に対応できるようにすることで安全性を高めている。反面、それは本当に必要なものを自分で考え取捨選択することの放棄でもある。沢における確保にもそれが当てはまるのではないか。神経質なほどザイルを出す反面、本当に必要なところで、必要な確保をしていただろうか。少なくとも今回の山行を振り返ると必ずしもそうではなかった。
繰り返すがこれは自分への反省である。他の部員に必ずしも当てはまるものではない。沢L権を持つ者は的確な確保ができて当たり前であるからだ。

ネコブ、ピリカヌプリ、丸山岳、羽後朝日岳。百名山だろうとマイナー12名山だろうと、登った山を数字の一つとして数えるだけでは味気がなさ過ぎる。しかし、人に出会わぬ静かな山域が好きな、そのくせ日本の山々の知識がまだまだ十分とは言えない自分にとってマイナー12名山は良い取っ掛かりであり一先ずの目標でもある。これは先輩方の影響を色濃く受けた結果であることは間違いない(Googleでマイナー12名山と入れるとTWVのブログが一番に出てくる)。
部名垂沢を遡下降することで日帰りができてしまう羽後朝日岳はもはや12名山の定義に入らないのかもしれないが、それでもマンダノ沢を詰めその頂に立てたことは大きな喜びである。現役の時の最大の心残りであったあの夏合宿に対する、一つのけじめとなりうるからだ。自分の企画で行けた、という点において個人的な感動は丸山岳山頂に立てたときのそれを凌ぐかもしれない。

最後になったけれども参加してくれた皆さんありがとう。
在京をやってくれた藤井もありがとう。
あの夏合宿の面子で、今回来れなかった皆さんには一足お先に申し訳ないです。誘われればまた行きます。でも今度は生保内川から入って和賀岳まで縦走したいなぁ。
今回の企画を立てた時から(というか2年前に敗退した時から)絶対にこの場で言いたいと思っていたのが1989年卒部の白土先輩へのお礼です。2年前の夏合宿時、雨の中に関わらず、それも幾度かに渡って車を出していただきありがとうございました。コースは少し違いますが、やっと記録をアップさせることができました。今回の山行、5人中3人があの時の面子です。

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